そろそろ晩飯の準備を始めようと、キッチンに立つと
「ドンワ〜ン」
後ろから聞こえてくる甘えたような声と、背中に感じる圧迫感。
…来たよ。どうしてコイツは本当にもう…
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テーマ:二次創作(BL)
ジャンル:小説・文学
「エリック、受賞おめでとう!」
「サンキュー、ドンワン」
「これでまた、俳優ムン・ジョンヒョクの評価が上がったな」
「いやいや、それほどでも」
「バ〜カ、顔がニヤけてんだよ」
昨秋に出演したドラマの演技が評価された年末の受賞祝いにと、12枚目のアルバム活動が落ち着いた今になって、ドンワンと2人で杯を交わした。
「でも凄かったな、ドラマの反響。演技とはいえ、普通の恋愛をするエリックを久しぶりに見た気がするな」
「普通の恋愛って何だよ。お前だってそうだろが。一昨年のドラマ出演以降、役者キム・ドンワンは舞台に映画に引っ張りだこだろ」
「いやいや、それほどでも」
「マネすんな」
ケラケラと笑い合いながら、酒の入ったグラスを何度となく鳴らす。
他のメンバーが殆ど俳優活動をしない中で、役者としての悩みや疑問・不安を語り合えるドンワンの存在は、俳優ムン・ジョンヒョクにとって唯一無二だ。
多分、お互いに…
「しっかし、次は単独でバラエティのレギュラーとか、お前は本当に意欲的だよなぁ」
「そぉかぁ?単純に面白そうだなとか、それだけのコトだぞ」
「俺はまた暫く演技はいいかなぁ。面白そうな企画とか脚本があれば別だけど、当分はSHINHWAだけにしておきたいし」
「面白そうな企画とか脚本って、例えばどんな?」
「そうだな…例えば…俳優キム・ドンワンとの共演とか?」
悪戯っぽい口調で、でも真剣にドンワンを見遣った。
「俺と?」
「そう。刑事と犯人とか、若しくは相棒…バディ物とかって面白いと思うけどな」
「バディねぇ…生き別れの兄弟、なんてどうだ?」
「それは無理があるだろ!」
「何でだよ?」
「顔だって体格だって違い過ぎるだろが」
「そうかぁ?結構イケると思うけどな」
「ウケ狙いかよ」
俺の本気に何処まで気付いているんだかいないんだか…
でも、ドンワンとのこの距離感が結構好きだったりする
「でもまぁ、いつか本当にドラマでも映画でも共演できたら、言う事無しなんだけどな」
「そうだなぁ。エリックと共演か…確かに面白そうだよな」
「だろ?ま、その時は俺が刑事でドンワンが犯人役だろうけどな」
「だから何でだよ!」
「そりゃ顔だろ?」
軽い酔いの勢いに任せ、お互いワハハと笑い合いながら肩を抱き合い、またグラスを鳴らす。
「いつか演ろうぜ!主演キム・ドンワン&ムン・ジョンヒョク!!」
「おう!ダブル主演で世界進出だ!!」
「目指せ、ハリウッド!!」
「狙うぞ、オスカー!!」
「…大きくでたな……」
「どうせなら、レッドカーペットを並んで歩こうぜ」
新しい目標だ…
「ドンワンさぁ、疲れないか?」
「ん?何が?」
「何か、お前っていつも走ってるイメージ」
あながち間違っていないと思う。
俺は同じ場所に止まることができない
いや、止まっていられない、と言った方が正しい
いつだって、もっと先へと望んでしまう。
「まぁ、無理に休めとは言わないけどさぁ…」
「けど…何だよ」
「あんまり、無理すんなよ」
コイツは…本当によく見てるよな…俺たちメンバーを
エリックは知っているんだろうか?
突っ走りがちな俺やミヌやジンが
慎重派なヘソンやエンディが
グループでもソロでも仕事に励める理由を…
カンパニーにエリックがいるという安心感
頑張れと励ましてくれる
時に休めと気遣ってくれる
お前に護られているという心強さ故にだ…
「疲れたらさ…ちゃんと休むよ」
「…ん」
「その時は、お前の背中を貸してくれ」
「ああ。背中でも胸でも貸してやる」
エリックの広く強い背中、深く大きな胸が
走り疲れた時の、俺の安らぎの場所だ…
「ジョ〜ン〜ヒョ〜ク〜!遊ぼうぜぇ!」
「ドワナぁ…お前、宿題終わったのか?」
「まだ!後でやるからイイ!」
「お前、一昨日もそんな事言って、結局やらなかっただろ?」
「だから昨日は、遊びに来なかっただろぉ」
ダメだ…今のドンワンに何言ってもムダだ…
目をキラッキラさせて、虫取り網握ってる…
机の上のノートを閉じ、自分の虫取り網を持って玄関へと走った。
「ジョンヒョク、今度の休みに山登りに行かないか?」
「このクソ暑い時にかよ…」
「馬っ鹿だなぁ、山は涼しいぞ。マイナスイオンだって…」
「ハイハイ、行きますよ。御一緒しますよ」
「おおっ!持つべきモノは親友だな!」
何が「持つべきモノは親友だ」だよ…
いつだって自分の都合に俺を巻き込むくせに
でも、それをイヤだと思っていない俺がいる
ドンワンの楽しそうな顔を見られて、密かに喜ぶ俺がいる
結局のところ、ドンワンと過ごす時間が他のどんなに充実した一日よりも、俺を満たしてくれるのだと知っているから
この次の休日も、俺はドンワンからの誘いを待っているんだろう…
昨夏からのドラマ撮影、秋からのNew Albumのレコーディングにジャケット撮影、
今年に入ってからはMVの撮影に、12集活動、17周年コンサート、アジアツアー、
そして、集大成のアンコールコンサート
デスクの上には、山積みになったカンパニーの仕事
最終的に、熱を出して寝込んでしまうという結果になった…
「おい、エリック?生きてるか?」
「んぅ…ドンワンか…生きてるよ…」
目を覚ますと、久方ぶりの手が俺の頬に額に触れ、もう一方の手を自分の額に当てた。
「ん。熱はもう大丈夫みたいだな」
「あぁ…皆の看病のお蔭かな…」
12集の活動が終わったと思ったら直ぐに次の仕事で海外へと飛び出した男は、妙に艶っぽい横目と尖らせた唇で
「何だ嫌味か?折角お粥作ってやったのに」
「お!マジ!?食う食う!!腹減った!」
笑いながら待ってろと言われるのに従う。
「美味いな。身体が癒されるよ…」
お世辞ではなく、心の底からそう思った…
満腹になったのに眠くならないのは、散々寝たのと久しぶりに見るこの笑顔の所為だ…
「ドンワン、もう暫く…時間、あるか?」
笑って応えた男に、今朝までに来た見舞客について、時が経つのも忘れて話した…
隣で眠る男の、目許にかかる前髪にそっと触れる。
整った鼻筋を、触れるか触れないかの距離で撫でる。
指先が辿り着いた、少し厚みのある唇を見つめる…
あと何日、こうして触れられるだろうか
あと何回、こうして抱き締められるだろうか
あと何度、こうして隣で眠れるだろうか
もう直ぐ俺のソロ活動が始まる。
そうなると、今までみたいに会うことは難しいだろう
“会いたい”と言えば、この男はどんな時でも会いに来るだろう
でも、
それを言ってはダメだと知っている
そうさせてはいけないと分かっている
この男に余計な負担をかけさせたくはない…
少し赤みの強い唇を見つめる。
暫くの間は自由に触れることは勿論
見ることもできなくなるから
“俺は、ドワナの眸が好きだな。深くて真っ黒で、何か落ち着く”
そう、お前が言ってくれたこの眸に
お前の顔を、お前の色を焼きつける。
エリックの赤を、俺の黒に焼きつける…
少し強く押し倒されたベッドの上
覆い被さるようにしてきたエリックが
俺の左肩にキスをして、軽く歯を立てた。
「さすがにシャワーの後じゃ、不味くはねえな…」
「…何だよ、まだ根に持ってたのか?しつこいぞ」
「うるせぇよ…」
9年ぶりの日本でのファンミーティング
公演中のメンバー全員での撮影タイム
エリックの左肩に、キスする真似をした俺の唇がぶつかった。
冗談半分でしかめっ面をした俺を、エリックは笑っていたクセに…
「冗談だろうが何だろうが、けっこう傷つくんだよ…」
「お前って、そんな繊細だったっけか?」
「うるせぇよ…」
大きな瞳が"拗ねるぞ"と訴えてくる
デカい図体でチビッ子みたいな態度が笑える
「仕方ないから今日はお前の好きにさせてやるよ」
「モノ好キだな……エロいぞ?目が」
「…うるせぇよ」
茶化してくる唇を受け止めながら
痕をつけられるのはマズイなと、頭の片隅で考えた…